📮KURUME LETTER
大学病院の長山臨床検査技師が日本超音波検査学会学術集会で「優秀症例報告賞」
大学病院臨床検査部の長山亜由美さんが「第49回日本超音波検査学会学術集会」に投稿した論文が優秀症例報告賞に選ばれました。この学会は、超音波検査学に関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供等を行い、超音波医学およびその関連学問領域の進歩普及、学術の発展に寄与することを目的としたもので、7月21日の学術集会で授賞式が行われました。
- 演題名:造影超音波検査が診断の契機となった肝原発濾胞性悪性リンパ腫の1例
長山さんは、2024年に本学医学部に新設された医療検査学科の前身となる本学医学部附属臨床検査専門学校の卒業生で、現在は大学病院の臨床検査部で臨床検査技師として勤務し、超音波検査を担当しています。
本学の臨床検査技師が勤務する大学病院の臨床検査部および医療センターの臨床検査室では、医師や先輩技師指導のもと研究活動を奨励して個々の能力向上を図っています。また、2024年4月からは医学部医療検査学科が開設され、それぞれの医療機関における高精度な検査データを迅速に提供するための優秀な人材を育てていきます。
参考:臨床検査部の研究業績
長山さんのコメント
前回論文執筆を行った際(2019年度)に同じ優秀症例報告賞を頂いたことがあり、まさか連続で受賞できるとは思いませんでしたので、驚きと同時に大変嬉しく思います。授賞式に参加して実際に賞を賜り、大変光栄に感じるとともにこの賞に恥じぬよう業務・研究に励みたいという身の引き締まる思いです。論文投稿にあたりご指導いただきました先生方はじめ、臨床検査部の内藤部長や入職当時より超音波検査でご指導していただいている川野技師長、上司の方々、そして切磋琢磨しあえる職場の方々に深く感謝いたします。
「この研究を進めたきっかけ」
悪性リンパ腫は、血液中の「リンパ球」からできる悪性腫瘍で、リンパ球は体の中のどこにでも存在するため、リンパ組織だけではなく、全身の臓器にも広がってしまう可能性があります。なかでも、肝臓で発生する悪性リンパ腫はとても珍しいと言われています。しかし今回、日常業務において、肝細胞癌との鑑別が困難であった肝原発悪性リンパ腫を経験し、その超音波検査像に興味を持ち始めたことが、研究を進めるきっかけになりました。
2021年1月上旬より論文作成に取り掛かり、ご指導いただいている先生方との討論を経て2022年10月に完成し、約1年10か月の時間を要しました。先生方に見ていただく前に、ある程度論文を形にするまでは、自分で時間を見つけて、休日や、子供たちが寝静まった夜に作業することが多かったです。先生方との討論会も夜になることもありましたが、いつも温かくご指導していただき、超音波診断センター教授 黒松亮子先生、放射線医学講座 隈部力先生にはとても感謝しています。
「論文執筆で苦労したこと」
この論文執筆に限らずですが、論文内容の主論点、つまり、この論文で何を伝えたいのか、そもそもの論文掲載の意義は何か。という『問いを立てる』ことに苦労しました。
~育児との両立~
また、仕事・家事・育児をしながら論文を書くという『時間』を見つけることがとても大変でした。当時、下の子は2歳で、まだまだ手がかかり、家族の協力が不可欠でした。
そのような中、指導医の先生方と話し合いながら進めていく必要がありましたが、私が家事と育児でなかなか時間が取れないだろうからとご配慮いただき、コロナ禍でZOOMが普及してきていたこともあり、オンラインで打ち合わせを行いながら論文作成していくことを提案いただきました。それにより日時や開催場所の制限が少なくなり、パソコン画面を共有して執筆内容を見てもらえるようになったことで複数の目で確認でき、むしろ対面の時よりも打ち合わせがしやすくなったように感じました。
「臨床検査技師という仕事について」
私たち臨床検査技師が臨床医へ報告した検査データは、患者さんの病気の早期発見、適切な治療に大きく貢献します。特に、超音波検査は、臨床の知識だけでなく、必要な所見を自分で描出する技術がなければ、正確な診断に繋がらないため、非常に大きな責任が伴います。しかし、患者さんから直接「ありがとう」「あなたに検査してもらえてよかった」「この超音波検査で病気を早く見つけてもらって助かった」などのお声をいただけた時や、臨床に貢献できた時は、非常に嬉しく、とてもやりがいを感じます。そして今以上により深い知識や技術を身に付けたいという思いが、私の活力につながっています。自分自身が経験を積み、成長で得た知識や技術が、患者さんの健康を支えることに繋がり、治療にも貢献できる点が、臨床検査技師の魅力ではないかと思います。
職場では毎回、患者さんの検査目的に応えたいという一心で、超音波検査に臨んでいます。臨床検査専門学校で、臨床的な知識や技術だけではなく、患者さん一人一人に寄り添った検査を行うことが大切であることを学び、接遇を意識した検査を心がけています。
AI技術を活用した超音波診断装置も研究開発されている今、検査者の専門性の高い知識と技術力が求められています。日々進歩する医療現場で、超音波検査の『質』をより高められるよう、更なる高みを目指して精進してまいります。