📮KURUME LETTER
【教員紹介】榎本 美佳 教授(人間健康学部 スポーツ医科学科)
自己紹介 榎本 美佳(人間健康学部 スポーツ医科学科)
人間健康学部スポーツ医科学科の榎本 美佳(えのもとみか)です。
循環器を専門とする医師で、大学病院で循環器内科の外来診療も行っています。
診療の他に、医学部内科学講座(心臓血管内科)で長年取り組んでいる久留米市田主丸町をフィールドにした循環器疫学の研究にも携わっています。もともと同講座の足達寿先生を中心に進められてきたもので、一緒に関わらせてもらっていましたが、先生のご退任を機に研究を引継ぎ今に至ります。
「田主丸研究」と呼ばれるこの研究は、歴史が古く、1958年に生活習慣特に栄養と冠動脈疾患の関連を調べる7カ国(生活環境が大きく異なる、アメリカ、日本、フィンランド、ユーゴスラビア、ギリシャ、イタリア、オランダ)の共同研究としてスタートしたものです。
現在でも本学独自の検診として10年おきに続けており、調査対象となる地区に居住する40歳以上の方を対象に、校区コミュニティーセンターで身体測定や心電図、採血のほか、動脈硬化を調べる検査、認知症のチェック、食習慣の聞き取りなどを行っています。次の検診は久留米大学が100周年を迎える2028年を予定しています。
その他にも長崎県の離島「宇久島」での住民検診も行っており、これらの研究は、その地域で一人一人がどのような循環器の病気を持っているか、その病気になった危険因子は何であるのか、食習慣がどうかかわっているかを検診で調べ、その結果を検診受診者や島民に還元することを目指したものです。
そういった研究のノウハウや、診療(医療)で培ったものを、文医融合のこの人間健康学部で、「医学」の側面から学生の皆さんに還元していけたらと思っています。
担当科目について
循環器系医学、疫学が専門で、医学部でも教鞭をとっています。スポーツ医科学科では、「医学」に関する基礎知識や、主に専門とする循環器を中心とした「生活習慣」「予防医学」といった、人が健康的に過ごすにはどういった生活を送るべきか、どんな運動が効果的かといったことを学ぶ科目を担当しています。
- からだのしくみ
- 医学総論
- 健康行動論
- 健康づくりと生活習慣病
- 健康生活概論
- 運動処方演習
- エイジングの理論と評価
- スポーツ医学実習 など
高齢化社会となった昨今、加齢に伴って生じるさまざまな課題を扱い、人々の健康で幸せな生活の実現に向けた提言をを目指し、医学や心理学、生理学、社会学、栄養学といったさまざまな学問分野が連携した学際的な学問「老年学」の重要性が高まっています。
冒頭で紹介した疫学研究は、その老年学の重要な要素となる「予防医学」のためのものでもあります。特に専門としている循環器の病気は、高齢者に多くみられることもあり、これまで外来診療などで培った経験や知識も生かした学びを提供できればと思っています。
授業の一例:
エイジングの理論と評価:世界で最も早く超高齢社会に突入している日本において、高齢者の健康寿命の延伸が喫緊の課題となっています。高齢者が自立した生活を送るためには、年齢や個人の体力に応じた身体活動を生涯継続する必要があります。本講義では、まず、老化とは何か、高齢者の老化に伴う身体的・精神的な特徴や状態を概説し、高齢者の心身の状態を測定・評価する方法を実習も加えて実践的に学ぶ授業です。
運動処方演習:運動(スポーツ)を安全に効果的に行うために必要なメディカルチェックを理解し、各病態に応じた運動プログラム作成を体験します。
専門分野:循環系医学、疫学
研究テーマ (参考:研究者紹介ページ)
- 宇久島検診におけるオキシトシンと認知機能検査との関連
- 宇久島検診におけるFABPとインスリン抵抗性・メタボリック症候群の進展との関連
- 田主丸検診におけるDHEASと認知機能維持との関連
- 宇久島検診におけるZAGと腎機能低下について
スポーツ医科学科は、私のような内科部門だけでなく、多くの手術を経験し人体の運動機能を熟知した整形外科の医師から直接指導を受けることができるのも魅力の一つです。
整形外科分野
副島 崇 教授「運動器系の疾患の治療、スポーツ医学」
ゼミの活動について
この学科で教えることになって間もないこともあり、今のところ卒論を書く学年のゼミは担当していませんが、医学分野の研究で学んだ論文作成に関するノウハウを伝えていけたらと思います。
論文作成の過程では、自分が疑問に思ったことについて、仮説・計画をたてて、それを実験やアンケートなどにより実証していきます。それが自分が思い描くような結果にならなくても、それをどう考察するかが重要で、それ次第で最終的に意味のある魅力的なものとなります。そうやって自分で考えて導き出したものを、きちんと人に説明できる力も同時に身に付けていってほしいです。
また学びを深めることも大事ですが、大学生活では自由になる時間も多くあり、その時間をどう自分の成長に生かせるかが重要です。その時間を有効に活用して、仲間と学びを深めるだけでなく、一度しかない学生生活を「楽しむ」ことも伝えられるような学びの場にできればと思っています。
受験生へのメッセージ
大学は、社会に出るために必要なことを学ぶ場ですが、時間のある学生の時にしかできない学問以外のことがたくさんありますので、いろいろなことを経験して、この4年間という貴重な時間をまずは楽しんでほしいと思います。
部活もその一つで、そこで友人を作り、毎日楽しく健康に過ごし学んでいってもらえたらと思います。ちなみに私は医学部で医学英語を学ぶ「JIMSA部」に入り、そこには支えてくれる仲間がいて、充実した学生生活を送ることができました。大学では、そういった仲間との出会いを大切に、自分の時間を自由に使うことのできる楽しさを是非感じてほしいです。
好きなもの、はまっているものなど
もともと高校まで関西にいたこともあり、京都奈良などの神社仏閣に触れる機会が多くありました。そんなこともあってか、神社仏閣や窯元巡りが好きなんですが、なかなか旅行する時間がなく、今は近場の博物館や美術館を見て回ることが多いです。自分で版画を作ることもあり、最近行った山下清さんの展覧会で、作品の純粋さに心が洗われる思いでした。