📮KURUME LETTER
明善高校でグローバルレクチャー
みなさん、こんにちは。
地元久留米の名門である明善高校からグローバルレクチャーと銘打って、講義の依頼がありました。総合文化コース1年生の生徒の皆さんのために、できればアメリカに関係することで、本格的な大学の講義を行って刺激を与えてほしいということでした。
最近、進学校ではときどき、優秀な先輩方を訪ねて、交流する企画が行われていますが、明善高校の総合文化コースでは、何と1年生の皆さんがアメリカのニューヨークなどに行って現地で活躍している先輩方を訪問しています。
そこで法学部の教員が「アメリカの国制と三権分立」と題して、60分弱の授業を行うことになりました。
明善高校は、久留米藩藩校の流れを汲む旧制中学明善校と久留米高等女学校を前身としており、1879(明治12)年が創立年です。正門の佇まいと紋章に、伝統の重みを感じます。
校舎本体は最近改築され、明るくてモダンな建物になっています。
正門横には、これまでの歴史などを刻んだ石碑が立っていました。
今回の授業は、視聴覚教室で行われました。
生徒の皆さんの司会で始まりました。
授業では、三権分立の一般的な説明を行って、その意味を深く掘り下げました。まず、その提唱者であるモンテスキューが、ローマの共和政体から「政治的自由」が機能する権力分立制と貴族的な中間勢力の重要性を学んだこと、当時のヨーロッパの歴史状況に合致するように、イギリスの国制を参考にしながら、三権分立を理念化したこと、貴族がいないアメリカは州単位の地方自治を基盤として三権分立を導入したところに独自性があることなどを、多角的に説明し、最後に日本の国制について問題提起をしました。
短時間で内容的に難しいかなと思いましたが、話している間じっと講師に目を向けてとても知的に満たされた表情をしている生徒さんが少なからずいました。また、授業の後、とてもポイントをついた質問が出て、大変愉快でした。
例えば、モンテスキューが頼りにした貴族階層とは何か、その存在がなくなっている現在、どこに政治のバランサーを求めたらいいのか。命を懸けて助け合いながら平等の精神で地域の街を作っていったのは、日本でも同じであるはずなのに、なぜ日本の国制は州単位のアメリカとこんなに違うのか。アメリカの大統領は州の選挙人で決まるのであれば、なぜそもそも国民による直接的な投票が必要なのか、最後に、トランプ大統領の登場でアメリカに何が起きているのか、成功すると思うかと聞かれました。
それぞれに誠実に答えたつもりですが、時間が足りずに後でああいえばよかったと思いました。しかし、お渡しした詳しいレジュメとそこに列挙している古典的著作に是非目をお通しください。それだけの力がおありの生徒さん方だとお見受けしました。
最後に生徒代表の方がお礼の言葉を述べてくれました。
アメリカ研修プログラムの実施要綱によりますと、その目的は、「依然、世界の動向に大きな影響力を持ち続ける大国・アメリカ合衆国を訪問し、国際政治の中心であるワシントンD.C.や世界経済の中心であるニューヨークの地に立つことで、「世界」を体感し、学習してきた英語を実際に使う体験をすることにより、(1)視野を筑後の地から日本、世界に広げ、自分と世界の距離を縮める機会とする、(2)改めて日本を、日本人であることを考える機会とする、(3)大志を抱き、文武に励む精神を涵養する契機とする」ことだそうです。
これまで、現地のゴスペル鑑賞、大学生との交流などと共に、国連日本代表で活躍中の先輩や天神ビックバンでも知られる世界的建築家重松象平氏などを訪問しています。
今年も3月に出発するそうです。素晴らしい研修プログラムを体感して、大きく成長して帰国されることを期待しています。できれば、将来、より視野を広げるために、アメリカ以外のヨーロッパや東南アジアなどにも是非行ってください。
世界は広くて深いです。
今回の授業は大学と高校の交流のよき例の一つになるかもしれません。またお目にかかれる機会があるといいなと思わせるようなひとときでした。
それでは、次回まで。