📮KURUME LETTER
【教員コラム】小津草太郎(人間健康部 総合子ども学科)
私は小津 草太郎(おづ そうたろう)と申します。研究している学問は心理学で、なかでも “ひとの心の育ち” に着目する「発達心理学」が専門になります。私の場合、特に幼児期までの発達を中心に扱うことが多いので「幼児心理学」ということもあります。心理学といっても、本当にさまざまな分野があります。
さて、研究者といっても、保育や子育ての現場にいくときほど、新しい発見や学びが得られることはありません。先日、保育実習でお世話になっている園を訪問したときのことです。こんなお話を聞かせていただきました。その園では、就職一年目の先生に「 “教育する” とはどういうことだと思いますか」と聞くことがあるそうです。さあ、あなたなら、どのようにこたえましょう.“教育する” とはどういうことだと思いますか?
ある新人の先生は「教えることです」とおっしゃったそうです。そうですね。わたしも、それはごく自然なこたえだと思います。ですが、こうした言葉の裏には子どもに対するどのような態度があらわれているのでしょうか。極端な捉え方をすれば、(経験や知識の足りない)子どもに対して(大人が知っていることを)教えて(やる)・・・という雰囲気が感じられます。「教育」とはそういうものなのでしょうか。
この話をしてくださった園の先生も、私も、ほぼ同じ感覚だったと思いますが、大人が「教育」において成すべきことは「子どもが本来もっている能力や育つ力を引き出すこと、導くこと」だと思います。心理学を専門的に学んでいても、自分の子どもを育てていても、それが、子どもを育てる(子どもが育つ)ことの本質であることがよくわかります。
保育や幼児教育においては、こうした子どもの見方が特に重視されています。例えば、実習の日誌でも、表記の仕方で学生がまず注意されるのが「子どもに○○させる」という書き方です。たとえそのつもりがなくても、こうした表現を繰り返し使うことは、正しい子どもの見方を歪めかねません。私が心理学の授業をする際にも、小さな子どもたちが世界のものごとを自ら発見し、自分を成長させ、前向きに生きていくために、私たち “大人” は何ができるのか、何をすべきなのかを学生たちと一緒に考えるようにしています。(在学生には伝わっているかな??)
こうした視点で子どもを見はじめると、おもしろいですよ! 活き活きとした姿がみえてくるはずです。そして、大人の存在も大切です。大人に見守られ、支えられ、子どもは育っていきます。それを専門的に、意識的に行なうのが保育者や教育者という仕事なのでしょう。そうした点が社会にもっと評価されるといいですね。