📮KURUME LETTER

【教員コラム】吉田典子(人間健康部 スポーツ医科学科)
🧑‍🏫教職員

【教員コラム】吉田典子(人間健康部 スポーツ医科学科)

吉田典子(よしだのりこ)です。

私は、学部の専⾨教育では、内科医としてスポーツ医学の「医」の部分を主に教えています。このコラムでは、「スポーツと私」というテーマで、⾃分を振り返ってみようと思います。

私の幼少時、4 歳年上の兄の後をついて回り、⽊に登ったり、屋根の上に登ったりと、外で遊ぶのが⼤好きで⽣傷が絶えませんでした。そのころの4歳の年の差は⼤きく、兄にとっては⾜⼿まといだったに違いありません。幼少時より体を動かすことが好きだったわけですが、競技として試合で勝つことの喜びを知ったのは、⼩学校5 年⽣のとき、校区内の地域別フットベースボール⼤会でした。

夏休みに練習を重ね、チームが優勝した時の充実感は今もよく覚えています。中学は軟式テニス部、そして⼤学では念願の硬式テニス部に⼊りました。先輩や後輩に恵まれ、1 年から6 年の夏まで、テニスに明け暮れた学⽣時代でした。計画的に練習をして少しずつ上達し、試合に臨み、期待した結果(それなりのレベルですが)を得たときの喜びは、⼩学校の時と少しも変わっていませんでした。当時の先輩から、練習して頑張ったその過程ではなく、「勝ったか負けたかの結果がすべて」と⾔われ、たとえ負けても頑張ったのだから・・・という慰めのことばはありませんでした。

競技スポーツでは勝つ⼈がいれば負ける⼈が必ずいます。教育的⽴場からは、⼈に勝つことよりも「⾃分⾃⾝を磨くことに意味がある」とすべきかもしれません。しかし、社会にでると、頑張るのは当たり前で、結果を出して初めて評価されます。1番になるつもりで望まなければ、2番にもなれません。その時の⾃分にできる最⼤限の知恵と体⼒を使って⾛り続ける必要があります。努⼒の出し惜しみをする余裕はありません。今振り返えると、結果が全てという厳しい部活動で過ごした学⽣時代を経て、知らぬまに⼼⾝共に強くなっていました。

卒業後は、医師としての専⾨は循環器内科(⼼臓や⾎管の病気を診る内科)を選びました。博⼠の学位を取るために指導教授からいただいた研究テーマは「運動と栄養」でした。⼼臓病を研究したいのに、このテーマは?・・・と最初はかなり⼾惑いました。しかし、研究を進める過程で、多くの⼼臓病の⽅に運動負荷試験を実施し、運動中の⼼電図や⾎圧・脈拍の変化を観察、診断し、運動プログラム作成の経験を重ねることができました。また、⽣きていく上で最も重要な「⾷べること」を改めて勉強することになりました。この経験により⼼臓病をはじめ⽣活習慣病の⽅に運動を指導するという、私の専⾨領域の基礎を作ることができたと考えています。その後、縁があって、本学の健康・スポーツ科学センターを経て、スポーツ医科学科の教員となりました。医師でありながら、⼀貫して運動をテーマに仕事ができているのは、とても幸せなことだと感じています。多くの先⾏研究により、⾝体活動すなわち運動は、⾷事をするのと同様に⽣きていく上で不可⽋な要素であり、病気の予防や治療においても薬と同等またはそれ以上の効果があるとされています。幅広い年代の⼈々に⽬的にあった適切な運動を指導する知識と技術は、今後益々多くの場⾯で必要とされるでしょう。

残念ながら、私を含め多くの医師は、運動について系統的な専⾨教育は受けていません。現在、私が専⾨教育の⽬標として⼤切にしていることは、学⽣の皆さんには、将来、医療機関やスポーツジム・運動施設で仕事をするときに、医師から信頼され、頼りにされる「運動・スポーツのプロフェッショナル」になってほしいということです。