📮KURUME LETTER
医学部医学科の学生が在学中に米国医師資格試験Step1に合格
本学医学部医学科6年生の阿部馨介さんが米国医師資格試験Step1に合格しました。
米国医師資格試験・USMLE(United States Medical Licensing Examination)とは、米国の医師免許(ECMFG Certificate)を取得する際に行われる国家資格試験です。
試験はすべて英語で実施され、最初の受験から7年以内にStep1~Step3のすべてに合格することが求められます。
国内の医学部で教育を受けた学生にとって難関の試験で、在学中の合格はかなり珍しいことです。阿部さんが挑戦した試験や合格までのエピソードなどについて紹介します。
USMLE受験のきっかけ
阿部さんは、幼少期から外国の人と接する機会が多く、小学校は授業のほとんどを英語で行う学校に進学。高校卒業後は海外にバックパッカーとして50か国以上を訪問した経験もあり「日本だけでなく、いつか海外でも働いてみたい」という想いを持っていたそうです。
また、人体の仕組みや解剖学にも興味を持ち、高校1年生で医師を志し、米国医師資格試験に挑戦することを決意しました。
試験の準備や対策について
USMLEの試験は、Step1の基礎医学(全科目)をベースにStep2やStep3の臨床問題に発展します。まず、阿部さんは先輩の合格体験記や知人からの情報、YouTubeなどで情報を集め、対策を考えました。
6年生でStep1に合格することを目標にプランを立て、4年生の実習が始まる前までに英語の問題集と日本の国家試験対策を復習。
主にUWorld(Online問題集)、FIRST AID(アメリカで実際に試験を受けた人が情報を出し対策をまとめたテキスト)、暗記カードアプリなどを使い、5年生で3千問以上の問題集を終わらせ、2回3回と繰り返し解いたそうです。
「大学のカリキュラムや実習との両立は大変でしたが、スケジュール管理を徹底し、同じ問題も含めて、全部で1万5千問くらいは解いたと思います」と、何度も読んだテキストや問題集を見せてくれました。
模試も5回受験し「1週間後に受験した場合の合格率97%」の結果が出た際に、Step1の受験を決めたそうです。
試験について
Step1の試験は東京や大阪の試験センターでCBT方式というコンピュータを利用して実施する試験方式で行われ、1ブロック40問を60分以内で解く試験が7ブロックで構成されていて、45分の休憩時間は自分で時間配分を決めることができます。
阿部さんは「問題を解くペースや休憩時間の配分、最後まで集中力を切らさないことが大切です。休憩時間の補食や糖分補給も忘れずに」と試験のコツについて教えてくれました。
合格発表のエピソード
試験の手応えや合格発表の瞬間について尋ねたところ「7割くらいはできたと思いました。おおよそ6割以上正解していれば合格するといわれていますが、確実に合格したという自信はありませんでした」。
約2週間後の合格発表まで、ずっとソワソワして落ち着かなかったそうです。
合格発表の日、合否を確認するページから発表の画面を開く瞬間はとても緊張したそうですが「『PASS(合格)』の文字を見た瞬間、嬉しさとホッとした気持ち、2年間頑張ってきた達成感でいっぱいになりました。家族にもすぐに報告しました」と笑顔で話してくれました。
大変だったこと、辛かったことについて
大変だったことや辛かったことについて尋ねたところ「日本ではメジャーではない、アメリカ特有の疾患や感染症、薬について覚えるのが大変でした。薬に関しては、その作用のメカニズムも出題範囲に含まれるので覚えることがとにかく多くて苦労しました。辛かったことは、周りの同期にStep1を受ける仲間がいなかったことが1番辛かったです。お互いに進捗状況を確認し合うこともできない孤独な戦いだったので、自分を信じてやっていくしかなかったことです」と苦しかった時期について振り返りました。
USMLE試験を目指す医学生へのアドバイス
阿部さんからは「本気で受験しようと思っている人には、ぜひ挑戦してほしいと思います。医学英語が分かるようになるし、何より合格したときの達成感があります。ただ、勉強方法はレクチャーできても実際に膨大な量を覚えないといけないので、中途半端な気持ちで受けるには難しい試験です。目標や確固たる思いを持って挑戦してほしいです。スケジュール管理をすること、基礎固めを早めにしておくこと(4年生までに習った内容を固めておく)、繰り返し問題集を解くこと(読むスピードが速くなる、1問を1分半くらいのペースで解けるように)が大切です」と、今後USMLE試験を目指す医学生に向けて激励の言葉とアドバイスがありました。
阿部さんは、今後は日本で経験を積みながら将来的には海外で医師として働きたいという希望を持っています。
7年以内にStep3に合格することを目指し、まずは今後1年~1年半を目安にStep2の試験に合格できるよう、準備を進めているところです。
「卒業試験や国家試験もあるので、そちらも両立しながら頑張りたいです」と意気込みを話してくれました。